プロトコル
プロトコル
ある日、X が消えたとします。会社が倒産しても、買収されても、あるいは政府の圧力で停止されてもいい。理由は何でも構いません。その日、あなたがこれまで書いてきた投稿は、すべて、どこへ行くのでしょうか?
私たちは普段、SNS を「当たり前にあるもの」として使っています。でも、SNS は「誰かの会社のサービス」です。会社が決めたルールに従い、会社のサーバーに私たちのデータが保管され、会社の判断でアカウントが凍結されることもあります。
それは別に悪いことではありません。ただ、そういう仕組みになっている、というだけです。
もしも、SNS が「誰のものでもなかったら」
ここで、ひとつ例え話をします。
あなたは普段、Eメールを使いますか? Gmail かもしれないし、Yahoo メールかもしれない。では、Gmail のユーザーから Yahoo のユーザーにメールが届くのは何故でしょう?
会社同士が提携しているから…? 違います。
「Eメール」というルールが、どこの会社のものでもなく、世界中で共通して使われているからです。これを「プロトコル」と呼びます。
プロトコル ── 誰のものでもない、共通の仕組み
Eメールというプロトコルがあるおかげで、Gmail が無くなっても、メールというものは無くなりません。Yahoo メールが終わっても、別のサービスでメールを使えます。なぜなら、メールはどこかの会社のものではなく、共通のプロトコルとして、世界に存在しているからです。
では、SNS は?
X が消えても、あなたの投稿は残り続けるかもしれません。
Instagram が買収されても、あなたの繋がりは守られるかもしれません。
そんな世界を作ろうとしているのが、ソーシャル・プロトコルという考え方です。
CAW は、ソーシャル・プロトコルの一つです。
CAW は、どこに存在しているのか
「会社が運営していない」と言うけれど、じゃあ CAW は、どこにあるのでしょうか? 答えは、こうです。
CAW は、Ethereum(イーサリアム)イーサリアム (Ethereum)アプリやトークンを動かせる、世界中で共有された巨大なコンピュータのようなブロックチェーン。→ 用語集で読むという「世界中のコンピュータがつながった巨大なネットワーク」の上に存在しています。(より正確には、Ethereum と、それを拡張する複数のネットワークにまたがって存在しています。)
世界中で無数のコンピュータが動いていて、そのどれか一台が落ちても、Ethereum は止まりません。一つの国や企業の判断だけでは、止められません。
「止まらない土地」の上に建てられた CAW は、止まることがないのです。
これが、CAW が「会社に依存しない」と言える、技術的な理由です。
CAW のプロトコルが特別な点
ここで CAW プロトコルの、最も重要な特徴を紹介します。
CAW は自身を「ソーシャル・クリアリングハウス」と呼びます。聞き慣れない言葉ですが、これは CAW の本質を表す、とても大事な発想です。この呼び名は、マニフェストの原題「A Manifesto on a Decentralized Social Clearing House」に由来します。
まず「クリアリングハウス」とは何か
金融の世界には「クリアリングハウス(手形交換所)」というものがあります。例えば、A銀行の顧客が、B銀行の顧客にお金を振り込んだとき、両方の銀行の間で「いくら動いた」という記録を中立的に管理する仕組みです。
クリアリングハウスの3つの性質
- お金を持たない ── それ自体は資産を保有しません
- 誰の味方もしない ── 完全に中立です
- 正確に記録するだけ ── それだけが仕事です
※説明のために単純化しています。実際の清算機関は証拠金を預かるなど、より複雑な役割も担います。
このおかげで、銀行同士は直接やり取りすることなく、正確で、改ざんされない記録を共有できます。
これを「SNS」に応用したのが、CAW です
普通の SNS では、X なら X が、Instagram なら Meta が、すべての投稿、すべてのフォロー、すべての「いいね」を自分のサーバーで管理しています。ということは、その会社の判断で、記録は変更されたり、消されたりできるわけです。
CAW はこの構造を、根本から変えます。
投稿・フォロー・いいねを、会社のサーバーが管理。会社の判断で変更・削除できる
投稿・フォロー・いいねを、Ethereum という中立の場所に記録。誰にも変更・削除できない
誰のものでもないクリアリングハウスが、人々の社会的な交流を、正確に、改ざんされずに記録する。これが、CAW が「ソーシャル・クリアリングハウス」と名乗る理由です。
この設計が意味するもの
ソーシャル・クリアリングハウスという発想は、SNS のあり方そのものを根本から問い直します。
- あなたの投稿は、もう「誰かの会社の所有物」ではない
- あなたのフォロー関係は、もう「アプリの中だけの繋がり」ではない
- 運営者の都合で、過去が書き換えられることはない
それはつまり、SNS がはじめて「インフラ」として存在できるようになる、ということ。
特定の企業のサービスではない、社会の基盤としての SNS。
それが、CAW プロトコルが目指している地点です。
あわせて、知っておいてほしいこと
ただし、「誰にも変更・削除できない」は、裏を返せば、あなた自身も投稿を消せない、ということでもあります。書いたものは永久に残る──その自由と重さの両方が、この設計には含まれています。
また、CAW 上の行動には少額のコストがかかる設計です。そのコストは運営会社ではなく、投稿者やネットワークを支える参加者に渡ります。
プロトコルの内部構造をさらに知っていく上で必要な技術的言葉を、たとえ話とともに、ひとつずつ解き明かしています。気になった言葉があれば、いつでも立ち寄ってください。






